19. エクソマス 〜 パース

Exmouth 〜 Perth





 エクソマスまではオーストラリア大陸を西へ西へと走ってきたわけだが、ここからはほぼ南下する

コースとなる。

オーストラリアは南半球の国なので、日本と違って南へ行くほど寒い。日当たりも北側の方がよい。

ブルームあたりは年中夏のような気候だったが、エクソマスで海に入った時は少し寒さを感じた。

このあたりを走っていたのは93年の10月後半あたりか。

上の地図中の青い色の線が今回の日記の部分だが、その途中に枝分かれしている箇所が2つ、

ここが今回の見所であーる。(^^)



かくれんぼ

 まずは一つ目の枝分かれ部分の付け根の町、町の名前は (Carnarvon) カナーボンと言う。

町自体はよくある普通の人口も数千人くらいの町だろうか、スーパーマーケットがあれば俺達に

してみれば十分町である。なぜなら生鮮食料品が買えるから。普段は缶詰が多いもので・・・

何も知らなければ1泊だけして次へ向かうところだったが、ここでエグッチャンが

「ここから北へ100キロくらい行ったところにある座礁した船をどうしても見たい」

と言う。それが上の地図の一つ目の枝分かれの先にあるということ。船の名前は

"Korean Star"と言う。

別に急ぐ旅でもなし、ライダーからライダーへと伝えられる、ガイドブックにも載っていない

ナマの情報でかなり穴場へ行ったりもしていたのでみんな賛成で行くことに。

その日は夕方近かったので、キャラバンパークでのんびりと過ごすことにした。

キャラバンパークに着くとみんなそれぞれの場所に自分のテントを張り、バイクから荷物をおろして

テントに入れる。特に食料品は必ずテント内に入れて置かないと朝起きたらものすごい量のアリに

集られてしまうし、カラスも狙っている、カンガルーやワラビーだって狙っているのでこれだけは

忘れるわけにはいかない。 またブーツの中にサソリが入っているということもあるのでブーツも

テントの中に入れておく。他にもバイクを整備したり、洗濯をしたりと結構やることも多い。

そこは木がいっぱいあるキャラバンパークだったので、木の上に登ってトムソーヤ気分になっていた。

そしたら

「ROOKIEさんどこ行った?」

「そういやぁ見あたらないなぁ、ヤツはじっとしていない男だからなぁ・・・」

「なんか欲しい物でもあって買い物でも行ったんじゃないの?」

「ムフフ、みんな気づいてないぞ、すぐ上(ほんの3,4メーター)にいるのに。(^^)」

木の上でのんびりしていること約20分、ザルが気が付いて

「あーっ そんなとこにいたんだぁ」

ということでかくれんぼおしまい、楽しかった。 (^^)



一度はあきらめたが・・・

 翌朝、早々とお米を炊いておにぎりをつくり、主な荷物はキャラバンパークに置いて軽装で出発。

国道をそれて海沿いに入ってからはかなり荒れた道だったが、すっかり腕も上がったライダー達は

なんなく走り抜ける。Korean Star に着く少し前、ブロウホールと言う見所があった。

海岸から何十メートルか岸へ入った岩に穴が空いていて、波が押し寄せるたびにそこから

ブワッとしぶきが上にあがる。結構な勢いで天然の噴水って感じ。

そこを出てすぐに今日の目的の Korean Star が見えた。


これが Korean Star  名前からすると
韓国の船
かと思われる。
(船籍はパナマ)


道路から見た感じだと、かなり遠くにある
せいか
大きさの感覚が今ひとつわからな
かったけど、
崖下まで降りて行ってみると
船の大きさに
圧倒された。

眼下に見えるインド洋はとってもきれい。
しかしあんな大きな船の船体がまっぷ
たつに
割れるほどだから自然の力と
言うものは
すごいもんだ。





 最初は上を走っている道端から見ていたのだが、そばで見たくなったのでみんなで降りていった。

そこそこ急な斜面だったが、慎重に下りればなんとかなりそう。

船のそばまで寄っていくと海岸にうち寄せる波しぶきの大きな音と、それにあわせて船が揺れ、

ギーッ ギーッっと軋む音が聞こえてとっても怖かった。

船の大きさにあらためて驚く。 船に乗れるかなぁ なんて思ったけど、届きそうで届かないし

足元には波が打ち寄せていて落ちたらヤバそう・・・

バカなことをやってここで旅を終わらせても仕方ないのであきらめてまた崖を登っていった。

崖の上からあらためてみんなで船を見ている時に

「やっぱり俺あの船に乗ってくるわ、このまま帰ったら一生後悔しそうや」

船のマストには落書きの後があった、ということは誰かがあそこまで行ったと言うこと。

他のヤツにできて俺にできないはずがない!! と言う強い思いで再び崖を降りて行く。

「やめといたほうがいいよぉ・・・」 とみんなは言うけどやっぱり悔いを残すのもいややしなぁ。

 船へのアプローチは垂れ下がっているワイヤーを伝って登っていく。
岩の上からワイヤーはギリギリ届かなかった
んで飛びついてぶら下がる。
直下は海なんで「もしワイヤーが切れたら俺アウトやなぁ・・・」
波打つごとに船は揺れるし かなり怖かったです。(笑)

登り切ったあと、しっかり船のマストに登ってサインしてきました。
写真がなくて残念。
(MAKOさんが持っている)

左で見守ってくれているのはエグッチャン。
わがまま言ってごめんなさい。m(__)m





イルカにタッチ

 上の地図中の2つめの枝分かれの先は Monkeymia (モンキーマイア)

イルカに触ることができるというのでオーストラリア全土に名が知られている町。

モンキーマイアの前にちょっと寄り道。
ここはシェルビーチと言うところ。
海岸が砂ではなくなんとこの白いの全てが貝殻。
ひとつ5ミリ〜1センチくらいの小さな貝で
びっしり埋まっている。

このポーズで写真とってもらうの、
かなり腕が痛かったです。~(>_<。)シ~
貝殻が腕にささりそう。(笑)

すっごく遠浅だったんですが、ずーっと
貝殻が続いているので泳ぐにはちょっと
向いてないような。



 このモンキーマイアは西海岸を旅する者にとっては見逃せないところ。

ここは日本からもツアーが出ていたような・・・。

ビーチにキャラバンパークがあったのでみんなでそこにテントを張って早速ビーチへ。

イルカに触ることができるといっても囲いがあったりするわけでもなく、野生のイルカに

餌付けをしていて、運がよければ寄ってくると言う感じ。

NOBUさん、MAKOさん、ザル達は釣りをしに行ったので、エグッチャンと2人でビーチへ行ってみた。

イルカの餌も売っていて、それを持ってイルカをおびきよせようとするけど横取りを狙っているペリカンが

いっぱい飛んでいて子供達なんかはしっかりペリカンに奪われていた。

同じペリカンでも動物園で見るのはかわいいがここではにっくきやつ。(笑)

イルカも気分次第で全然こなかったりもするのだが、延々と待ち続けていたらようやく寄ってきてくれた。

早速エグッチャンに写真を撮ってもらう。


鮫肌と言う言葉があるが、イルカもさわり
心地は
ザラザラ、まるでヤスリのよう。

キュー ととってもカワイイ声で鳴くのです。
イルカ同士で会話が成り立っているのかと
思うくらい。

人間の周りをクルクルまわったり、さすが
ほ乳類、
頭よさそう。(笑)
鯨を見た時もそうやったけど、
人間にサービスしてくれているように感じる。



 イルカと遊んでテントの方へ戻ってみると、NOBUさん達がたくさん魚を釣っていた。

この日はその魚を入れてみんなでカレーを作った。フィッシュカレー、うまかったなぁ・・・



ケガの功名

 このモンキーマイアのキャンプ場で、MAKOさんが散髪することに。

ツーリング中は散髪なんてほとんどしない。僕自身シドニーを出て以来散髪したのは1ヶ月半前に

出会った床屋ライダーさんにケアンズでしてもらってそれっきり。

今回はザルがやりたいと言い出して、MAKOさんの頭にハサミを入れていた。(初挑戦らしい)

しばらくしてそのカット状況をNOBUさんが見た時に、

「ゲッ これはもう修正不可能やぞ」 と一言。

顔がサーッと青くなっていくMAKOさん。(笑) トイレに行って鏡をみてさらに青くなって帰ってきた。

しゃぁないなぁと選手交代、NOBUさんに変わったけど切ってしまったものはどうしようもないので

耳の周りから後頭部まで数センチごっそり切り落としてカミソリで剃って、頭の下半分が青々と

した妙な髪型に。本人には悪いがこれを見たみんなが大爆笑。

後で聞いた話だが、その日の夜になってからやってきた日本人の旅人が話しかけてきた。

その時にうちらのグループにいたMAKOさんの髪型を見て

「あそこのグループに話しかけたのはマズかったかも・・・なんかヤバそう」

とか話していたそうで。

しかしこれが慣れると見る側も本人も気にしなくなるもので、それどころかMAKOさん自身が

今の髪型をとっても気に入っているよう。

そのうち僕自身がMAKOさんの髪型のことを

「いいなぁ 俺もやりたいなぁ・・・」 なんて思うようになってきた。 (笑)


モンキーマイアの次に泊まった

Northampton (ノーサンプトン)でMAKOさんに
散髪してもらうことに。

MAKOさんの髪型もさることながら、
ROOKIEの髪型もこのあとおもしろいことに。
ハートマークが見えるでしょ?










あのハートマークはフチだけ残して周りは
キレイにつんつるてん。 (笑)
こんな髪型、今じゃ絶対できないよ。


このあと日焼けで頭皮がボロボロめくれてきた。


後ろでぴーす V(^0^) しているのはエグッチャン。









 このノーサンプトン、MAKOさん、ザルと3人で町のバーに行って飲んでたら、常連さんらしき

オッチャン達が話しかけてきて一緒にダーツをやろうって。

初めてだったのでルールから教えてもらって。とっても楽しい時を過ごせた。



トラブルを乗り越えて

 実はこの町に着く前からMAKOさんのバイクがかなりヤバイ状態になっていた。

リアスプロケット(後輪についている歯車)がかなりすり減っていて、チェーンが歯にひっかからず

走れない状態に限りなく近い。自分のバイクでなくても仲間のバイクにトラブルがあると

とっても心配になるものだ。

自分もケープヨークの帰りにまったく同じ経験をしたことがあるのでこれはもう新しいスプロケットを

買ってくるしかないことはすぐにわかった。

ただ、オーストラリアはよっぽど大きな町でないとバイク屋なんてない。

仮にあったとしても、そのバイクにあったスプロケットの在庫があるとは限らない。

運がよかったのは今はバイク乗りが4人一緒にいるということ。

これが一人だと不安の大きさは計り知れないものになるであろう。

(MAKOさんはどう思ったかは定かでないが)

地図で見るとここから約50キロほど先の町はそこそこ大きな町のようだった。

NOBUさんがバイクを貸してくれてそのバイクでMAKOさんが一か八かのバイク屋探しへ走っていった。

3時間ほど経った頃か、MAKOさんが帰ってきて

「あったよ〜 ラッキー (^^)」

ということですぐさまみんなで手伝ってスプロケ交換をした。

しかし!! ( ̄□ ̄;)!!

チェーンとサイズが合わない・・・チェーンのほうが思ったよりも幅が狭いサイズだったのだ。

その場になんとも言えない沈んだ空気が流れる。どうしようか・・・

MAKOさんはそのスプロケットを持って一人近くのロードハウス(ガソリンスタンド)へ歩いていった。

さらに1時間ほどしてから帰ってきたのでどうしたのか見たら、グラインダーを借りてひたすら

スプロケットを削っていたとのこと。

チェーンの当たる部分を削り倒して厚みを薄くしてチェーンをフィットさせようと考えたらしい。

そして再度取り付けてみて・・・

「今度こそ大丈夫」

自分の身を削ってでも助け合うと言う意識を持つ仲間達、そしてたとえ一人でもどんなトラブルが

起きても自分で何とかするのだという不屈の精神にがあってこそ、オーストラリア一周が

達成できるというものか。



パースまであと500キロ。 次は久々の巨大都市パースです。  お楽しみに


home      back      next     index

ツーリング写真館もどうぞご覧ください