16. ギブリバーロード
(Gibbriver road)


呪われた道

カナナラからブルームへはほとんどの人が国道1号線を走る。しかし地図で見ると

ギブリバーロードと言う道があり、若干距離はそちらを通ったほうが短い。

(上の地図参照、紫色の点の軌跡が国道1号線))

しかし700kmの全行程オール未舗装。しかもオーストラリアで一番熱いと言われる地域だ。

この700kmの道、バイクでAUSを走るようなやつらはオフロード大好きなんで好んでこの道を

走っていく、でもいろいろ話を聞いているとギブリバーロードではどうもトラブルが多いのだ。

  ・大転倒してバイクが廃車になってしまったヤツ・・・

  ・パンクしまくりで泣いたヤツ・・・

  ・高熱を出してフライングドクターの世話になったヤツ・・・

などなど。べつに科学的根拠があるわけでもないけどちょっぴり不安になる。


おなじみのトップページの写真。
ここがギブリバーロードの入り口。
左の青い看板の足に、カカドゥで一緒だった
アツさんからのメッセージが書いてあった。


「ダート大嫌いだから僕は行かないよ〜だ。
 ROOKIEさん、ナンチャン、コージ君
 がんばってね」  だって。

ここが地獄の1丁目、次の補給箇所は
341kmのマウントバーネット。
さぁ気を引き締めて
目指せ完走




もしかして? まさか・・・

ギブリバーロードに入ってすぐに牧場があった。別に道中急ぐわけでもなく、もともとブッシュキャンプ

(野宿)覚悟の上なんでちょっと牧場へ行ってみることに。

だいたいギブリバーロードを通る交通ですら一日数台あるかないかってところなのに、なぜかしら

観光用の牧場のようだった。そこで冷たいコーラを買ったときに店員さんが

「そういえば数日前自転車に乗った男の子が来たよ。」 と。

「ええっ もしかしてカナナラで俺らがそそのかしたコーキ君、ほんとにチャリで来たんか!?」

と相棒のコージ君と驚きの表情。でもまさかなぁ・・・ こんな悪条件のそろった道、しかも補給箇所も

あんまりないところをチャリで・・・  彼のことが心配でたまらなくなる。



ひどい道だなぁ ギブリバーロードをそれて牧場へ行く道。
でっかい石がゴロゴロしていて何度も
転倒しそうになった。

バイクで来る人などいないので道もこれで
いいみたい。(笑)

しかしこんなところへ来る人がいるのだろうか
といつも思ってしまう。


♪いい湯だな〜 牧場の近くにある温泉。
上の写真の道ばたにあると牧場の人が
教えてくれた。

こうしてどっぷりとお湯につかるのも何週間ぶりか。
シャワーを浴びるだけというのが当たり前の生活。

そしてこの次にこうしてお湯に浸かれるのは
1ヶ月以上先となる。




やはりタダでは通れない

牧場で遊んだあと、また西へ向かって走り続ける。ペトロや冷たい飲み物はないが、泊まるだけ

のキャラバンパークなら近くにあると地図に載っていたので初日はそこで泊まることに。

管理人もいない、自分たち以外には誰もいないキャラバンパークだった。これが一人だったら

寂しかっただろうなぁ・・・ まぁ基本的には一人旅なんだが。

コージ君がラジオを持っていて、こんな僻地でもAMならしっかり受信できる、原始からずーっと

変わっていないような景色を眺めながら、文明のありがたさを感じた。

コカコーラのC.M.とか 他にはその年にヒットした曲が流れたりして

ROOKIE : 「俺 この曲めっちゃ好きやねん。」

コージ君 : 「あぁ 俺もこれ好きや〜」

誰もいない僻地で2人で合唱が始まった。

キャラバンパークのシャワー施設。
管理人もいない無人のキャラバンパークは初めて。

水道は無く、目の前にある川から左上にある

タンクに貯めて、そこから流れてくるだけ。
日中の日差しで少しだけ生温くなっていたが、
シャワーを浴びた後はちょっと寒かった。

タオル1枚で隠して登場。(笑)
誰もいないから気にしないのだ。


キャンプ場でも毎日お米を炊いて食べている。 ここでもまた晩ご飯のために米を研いで

炊こうと思ったけど水道がない。つまり水はシャワールームからしか調達できない。

飲料水は持っているが無駄遣いはできないので、しかたなくその水を使って米を研いで炊いて、

晩ご飯を食べた。まぁ沸騰させてるし大丈夫やろう。とあまり心配はしていなかったが、

翌日から2人とも下痢に。 (x_x) 

結局ギブリバーロードを走り終えるまで2人の下痢はずーっと続いた。

「あぁ もう最悪や〜 やっぱりこの道はすんなり通してくれへんなぁ・・・」



チャリダー発見

夕べは地面が熱すぎてよく眠れなかった。 これから大丈夫だろうか・・・

2日目、例によってダートなのでバイクが砂埃を吸わないように2台は数km距離をあけて走る。

前方はるか彼方に前者が見えるかどうかと言う感じ。

ほとんどはお互いが見えないほどの距離をあけて走っている。

しばらく走って休憩しようと止まったがコージ君がこない。 普通なら数分後には来るはず、

心配になって戻ってみると大転倒したらしい。

結構な速度で転んだらしく、ステップは曲がりコージ君はキンタマをすりむいたとかで痛そう・・・

だがここで休んでも暑さで体力を消耗するばかりなので先へ進むことにする。

その後しばらくして、どうも自転車の跡らしきものが路面に見えるようになってきた。

バイクを止めてよーく見てみるがどう見てもバイクや車の跡ではない。

「やっぱコーキ君かも、この感じからするとそんなに遠くないぞ」

と話して走り出すと案の定すぐに自転車を発見、やはりコーキ君だった。

水を13リットルも積んでいた。

「うっわ〜 しかしほんまに来るとは思わんかったわ、ようやるなぁ 大丈夫か?」


見つけたのは入り口から300kmほどの地点、まだ残り400kmある。自転車がパンクしたらしく

3人で一緒にパンク修理した。なんとかいろいろ力になったあげたいところだが、バイクと

自転車ではどうにもならない。未舗装路なので引っ張ったり押したりもできない。

自分達は大丈夫だからと水を数リットルあげて、その後の無事を祈ってバイクを走らせた。

あのギブリバーロードを自転車で走った男。僕の頭からは彼の記憶は消えることはないだろう。

パンク修理 尖った石が多く、僕のバイクも
パンクしてしまった。

温度計を見たらなんと42℃!!
わずかな陰を探してパンク修理。
炎天下の作業で吹き出す汗、
ペットボトルに詰めた水をむが
すっかりお湯になってしまっている。


あぁ 冷たいコーラが飲みて〜

写真はノースリーブのシャツだが走行中は
革ジャンを着て走っている。




大ショック

チャリダーコーキ君を後に走り始めて、もうまもなくギブリバーロードの中間地点のロードハウスに

つく頃だと気力を振り絞って走っていた。 灼熱地獄の中、ようやく冷たい飲み物が飲める。

あぁもう少しだぁ ガンバレガンバレと自分に言い聞かせて走っていた。

そしてようやくロードハウスに到着・・・ あれっ なんか様子が変だぞ・・・

と、しばらくして ( ̄□ ̄;)!!

休みやんけ〜!! 今日は日曜日だったのである。 文明とは離れたキャンプ生活を毎日

していると曜日感覚がなくなってくる。 日曜日だとは2人とも全然気がつかなかった。

フラフラの体にムチ打って、最後のほうは気力だけで走ってきたけど、一気に気力が失せた。

もう動く気にもなれない、このままここでテント張ろうか・・・。

そこのロードハウスには僕らの他にスイス人2人組の女性が車で旅をしていて、僕らと

同じくロードハウスが休みでショックを受けていたようだ。彼女らは燃料を補給しないと

どうにも次へ進めないらしく、そのままロードハウスで一泊するとのこと。

彼女らが言うには50kmほど先へ行けば民家があるはず、そこで燃料ももらえるだろうと。

コージ君とどうしようか迷ったが、とりあえず人の気配がするところへ行こうと言うことで、

50km先の民家へ行くことに。

少し道に迷ってタンクもリザーブに入り、あぁやばいかなぁ・・・なんて思い始めたころ

なんとか牧場らしきところを発見。 そこで泊めてもらえないかと頼んだ。

1人$30 と言われたが2人で$50にマケてもらってそこの牧場の離れのような部屋で

お泊まり。ベッドで寝るのはダーウィン以来だ。

翌朝なぜかしらタイヤがパンクしていたのでそれを修理して出発した。

やっとたどりついた牧場 日曜日で休みだったロードハウスから
50km、ようやくみつけた牧場。
ペトロも残り少なくなってとても不安だった。

周りになんにもないところにポツンとある。
一番近い町まででも300kmらいありそう。
いったいどうやって生活しているのだろう。

久しぶりに室内で寝ることができた。




ニアミス

鋭気を養ってギブリバーでの3日目を迎える。 残り300kmを一気に走り抜けるつもりだ。

まだ2人とも下痢でツライものもあったが、3日目はパンクもなく順調に走っていった。

暑さでかなりツライので結構まめに休憩をとる。すると珍しく向こうの方から土煙が上がっている

近づいてきたらそれは1台のバイクだった。

こんな僻地にバイクがいることが珍しいのか向こうも止まった。 彼もまたツーリングライダーだ。

一人で旅をしているオーストラリア人、結構年輩のように見えた。

これからのロードコンディションのことをお互いに話していたのだが、彼が言うには

「2時間ほど前に3人組のライダーとすれ違った」 と言う。

3人組?? すぐにピーンときた、ここらで3人組で走っているライダーと言えばあの3人しかいない。

そう、ギブリバーロードの入口の町、カナナラで会ったMAKO、NOBU、ヒロの3人だ。

どうやら僕らの1日後にギブリバーに入り、僕らが牧場で泊まっている間に抜かして行ったようだ。

ほんの2時間ほどの差で同じ道を走っていたのだ。

もし僕らが休日で閉まっていたロードハウスに泊まっていたら彼らと会っていたことだろう。

ほんとにニアミスって感じ。





コージ君と別れる

3日目にギブリバーロードを抜けることもできたのだが、終点間際に「トンネルクリーク」と言う観光名所が

あるのでそっちに寄り道して、結局そこで1泊することに。 トンネルクリークの話はツーリング前に

すでにツーリングを終えたライダーから聞いていて、もし近くを通れば行こうと思っていたところだった。

なんとか4日目にギブリバーロードを抜けた。 下痢におそわれ、パンクに泣かされ、ロードハウスも

閉まっていてとずいぶん泣かされてきた道だったが、ようやく抜け出ることができた。

700kmぶりに出た舗装道路でコージ君と記念写真を撮る。

まだ昼前だったのでそのままブルームへ向かうつもりだったが、コージ君は途中で抜かしてきた

チャリダーのコーキ君がギブリバーを抜けてくるまで待っていると。

ブキャナンハイウェイで会って以来8日間にわたって行動をともにしてきたコージ君と

ここで別れることに。 ブルームまではあと200km、このブルームの町はかなり大きな町で

ダーウィン以来のバイク屋さんもあるような町。

「1週間くらいはのんびりしてるから先に行って待ってるぞ。また会うやろう。」

とお互いの無事を祈って、またチャリダーコーキ君が無事であることを願ってバイクを走らせた。

そしてブルームへ・・・


    

   次はブルーム、ここからはとっても賑やかになります。 お楽しみに。


用  語  解  説
フライングドクター オーストラリアの僻地では、病院まで何百qもあるようなところがザラにあるので
重病人が急に出た場合は、日本のように救急車ではなく、自家用セスナ機に
乗った医者がやってくる。 ライダーの中でもフライングドクターの世話になった人も。
ただし保険は利かないので10万円単位の請求をされる。
リザーブタンク バイクには燃料計はついていないので、普通はライダーが燃費とタンクの
容量からどれくらいで燃料がなくなるかを考えながら走る。
しかし たまに忘れてしまってガス欠に・・・なんてことにもなりかねないので、
バイクの燃料コックは何リットルか残った状態でガス欠になるようになっていて、
ガス欠後に燃料コックを予備(リザーブ)に切り替えると残りの数リットルも
使えるようになる。
通常はリザーブになる前に燃料補給する。


ツーリング写真館もどうぞご覧ください

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