06. ケープヨーク 4

(Cape York 4)


また1000q

岬に立ったことで一つの目標を達成したわけだが、一本道を来たのだからまた同じ道を

通って帰らなければならない。NEWとOLDの違いはあるが。

ケアンズへ向けて走り出してまもなく、ジャーダインリバーでNEWロードに入る。

こちらは道幅がとても広く、車で走るには走りやすいだろうが海岸のごとく砂が深く

バイクにとっては走りづらい。多少腕が上がったのだろうか、砂にハンドルをとられても

600ccのパワーで乗り越えることができるようになった。

途中一旦OLDロードと合流するところがあるのだが、ここにはエリオットフォールという

ちょっとした水場がある。行く時はあまり余裕がなかったので寄らなかったけど、帰りは

ゆっくり帰るし、ちょっと道をそれてよってみることにした。


ウェンロックリバー以来の水浴。
とにかく暑いところ
なので水を見ると
飛び込みたくなる。


他に誰がいるわけでもなし、海パンなんて
なくても
全然平気なのだ。

      (左写真)

バイク運転してるととても肩こるんです。
ちょっと肩こり直るかな・・・なんて。

ほんとに気持ちよさそうな顔してるでしょ。

(右写真)




それでも転倒

行きがけにウェンロックリバーの近くで転倒を繰り返し、そこでダウンしたことは先にも

書いたけど、何度通っても道が悪いところは悪い。川を渡る直前にプルダストに突入、

そのまま大ゴケした。ヘルメットの中まで砂だらけ、目にも入ってめっちゃ痛い。グローブの

中も背中も砂だらけになってしまった。しかもバイクに足を挟まれて身動き出来ない状態。

例によってナンチャンとは距離をあけて走っているため、まだ現れない。根性入れてバイクを

揺すりながらなんとか足を抜き、力を振り絞ってバイクを起こす。

それからまたしばらく走っていると誰かが手を振っている、助けを求めているようなので

そこで止まると、バイクがコースアウトしてブッシュに突っ込んでいた。

メルボルンから来たと言う53歳の男性、自分らの若さでもめっちゃハードでヘトヘトに

なって行って来たケープヨークにこの年でバイクで挑むとは・・・しばし呆然。

しかもバイクはBMWの1000ccクラスのやつで、どう考えても一人では引っ張り出すことは

できない。仕方がないので誰かが来るのを待っていたところに僕らが通りかかったというわけ。

3人で道まで引っ張りだすとその男性は汗びっしょりになってthank youを連発していたが、

「このバイクでOLDロードに行っても大丈夫だろうか?」と言う、見上げた根性である。

ガンショットリバーや丸太の橋など、どう考えてもそのバイクでは無理そうなので絶対NEWに

したほうがいいと言って別れたが彼は無事にトップに着けたんだろうか。



4人組

帰りの2日目はアーチャリバーで泊まろうかと話していたけど、思いのほかよく走り午前中に

着いてしまった。そこにはケアンズのB.Pでとなりにいて、先日一緒にBBQをした4人組がいた。

ノブさん マコさん いづみさんにヒロ。しかしそこへ来るまでにいづみさんが大クラッシュした

らしくてメーター周りがごっそりなくなっていた。

マコさんが僕に 「ROOKIEの革ジャンってそれサイの皮?」 って聞くほど牛革の真っ黒な

革ジャンが砂まみれで真っ白になっていた。身も心もボロボロヘトヘトになって帰途についている

僕らとは対照的に彼らは目を輝かせてこれからケープヨークへ向かうと言う。

お互いの無事を祈ってまた走り出すが、彼らとはこの後、何度も出会うことになる。



走行不能

ケアンズを出発前、バイクの各パーツは十分点検してきたつもりだったけど、トップに着いた時点で

スプロケットが予想外に減っていた。「まあケアンズに帰るまでくらい持つやろう」 と気楽に考えて

いたのが甘かった。

最初は歯飛びをちょっと起こす程度だったが、あっという間にその回数が増えてきた。

最初は歯が進行方向に波打つように曲がってくるので一旦はずし、それを裏返しにつけたりも

してみたがあっという間にすり減ってしまう。「ヤバイかな」 そんな思いが脳裏をかすめるように

なってまもなく、ついにまったく走れなくなってしまった。ケアンズまであと180q、ナンチャンが

持っていた荷造り用のヒモで牽引を試みるが一瞬でプツン。

  ナンチャン : 「しゃあないから俺ケアンズまで行って買ってまた戻ってくるわ。」

  ROOKIE :  「ほなー 悪いけど頼むわ」

僕はそこでブッシュキャンプ、翌日までナンチャンを待つこととなる。

新品と比べてみればよくわかるのだが。

よくここまで減るほど走ったなぁと自分
でも驚くほどの減りよう。

記念に持って帰ってきて、部屋に飾ってある。




ヒッチハイク

走行不能になったその場でテントを張って寝ることになったのはいいが、朝方暑さで目が覚める。

ナンチャンが今日バイク屋へ行ってからここへ戻ってくるのはおそらく昼過ぎにはなるだろう。

バイクが壊れていてはどこへ行けるわけでもなく、あたりはなんにもないしあまりにも暇である。

なんとか時間をつぶそうと歌を歌ったり落語を一人でやったりするがすぐにネタぎれに。

とうとう我慢出来ずに近くのロードハウスまでヒッチハイクすることを決意する。帰りもまた

なんとかなるやろう。

しばらくすると1台車がやってきた。手を挙げるとすぐに止まってくれて事情を説明すると快く

乗せてくれた。犬を一匹乗せた老人が一人で運転している。その老人は積んであったクーラー

ボックスからよく冷えたビールを取り出し「暑かったやろう、一本どう?」て感じでくれた。

ナンチャンを待っている炎天下の中、ぬるくなったペットボトルの水でノドの渇きを癒していた

僕にとって、その老人がくれたビールは値千金。なんてうまいビールだろう!!

45qほど走るとロードハウスに着きそこでお礼を言って降ろしてもらう。ハンバーガーをがむしゃらに

食べた後、帰りの車をヒッチハイクしたら「今からちょっとビール飲んでくから、おまえも一緒にどう?」

オーストラリアの人は本当に人なつっこい。初対面でも前から友達のようだ。

その車は男女4人組の旅行者のようで、気前よく一杯のビールをおごってくれた。店を出てこれから

車に乗り込もうとしたときにちょうどナンチャンがやってきて、45q先のバイクのところまで一緒に走る。

ナンチャンが買って来てくれたスプロケットはぴったりフィット。(^-^)

「あぁこれでやっと帰れる、ナンチャンほんまごくろうさん、助かったわぁ。」 

トラブル続きのケープヨーク行も、8日目にしてようやくケアンズに帰ってくることができたのである。

帰還祝いにナンチャンとモンゴル料理を食べに行き、ビールで乾杯。お互いよくやったよ。


用 語 解 説
プルダスト 非常に小さい粒子の砂で小麦粉のようにフカフカしている。なぜ
できるかはわからないが未舗装路に突然現れるので、すっとばして
いると避けられずに突っ込んでしまう。。
スプロケット バイクの後輪に付いている歯車状のものでこれにチェーンがかかって
駆動する。

ツーリング写真館もどうぞご覧ください

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