国道2号線 中編
2003/9/7UP

 国道2号線を走り初めて初日は岡山駅前バスターミナルのベンチで夜を明かした。

翌朝、人が増える前の早朝からすでに出発した。走る道は相変わらず国道2号線だ。

しかし今日は朝から雲行きがあやしく、走り出してまもなく雨が降ってきた。

車や鉄道の旅とは違って、自転車でのツーリング中に雨に降られると言うことはつまり

自分が濡れるということ。もちろん合羽も持っているのだが、重たい荷物を積んだ自転車を

ひたすらこぎ続けているわけだから真冬でも汗をかく。

雨宿りをして合羽を脱いで休憩することが多くなり、なかなか距離が稼げない。

80kmくらい進んだだろうか、岡山県から広島県に入ってすぐのところに福山と言う

大きな町がある。新幹線も止まるので駅もかなり大きい。

私はそこで長時間の休憩を取ることにした。

前日の夜は繁華街の岡山駅前のバス停のベンチ、そして今朝は人が動き出す前の早朝

から走り出している、さすがにかなり疲れと眠気があったので、駅の待合室に入って

そこのベンチで横になっていた、日中で人も結構いたがあっというまに眠りについてしまった。

しかし駅の待合室は寝る場所ではない、誰かが通報したのかあるいはたまたま巡回に

きていたのか駅の制服の公安官に起こされる。

「君、こんなところで何をしているんだ、ここは寝るところじゃない、切符がないのなら
 出て行きなさい」


私は寝ぼけていたのもあってか、黙ってうなづくと外へ出ていった。

しかし雨は止まず、まだ眠りたりなかったので公安官が出ていったのを見計らって

また待合室へ戻って寝る。

しばらくしてまた公安官がやってきた。さすがに今度はかなり強い口調で

「ここで寝たらだめだって言うのがわからんのかっ!!」

さすがに2回も出ていけと言われるともう戻る気にはなれず、しぶしぶ合羽を着て

雨の中を西へ向いて走り出した。まぁ、駅は寝る場所じゃないからね、仕方ない。



 福山からまた数十km走ったところに尾道という町がある。筒井康隆の「時をかける少女」

や「転校生」の舞台になった町。例によって私は駅へ寄りたがる習性があるので

国道をそれて尾道駅の方へ行ってみた。もう夕方、駅のそばのパン屋さんでパンを

買ってそれを夕食にした。雨はほぼ止んでいて、もう合羽を着なくてもいいくらいに

なっていたがどうしよう、まだ西へ進むかそれとももう日が暮れかかっているのでこの町

のどっかで寝ることにするか・・・

少し考えた結果、今日は雨であまり距離が稼げなかったので、日没後もまだ走ることにした。

すっかり日も暮れた国道2号線、大型トラックがバンバン走る横を1台の自転車がゆっくりと

進んでいく。夜8時になってもまだ走っていた、泊まるためのいいロケーションのところが

見つからず、どこで泊まろうかなどと考えながら走っていた。

大阪を出てまだ2日目だが、一日中走っているような感じだったのでさすがに

疲労困憊、こうなると精神力も弱くなってくる・・・

ヒッチハイクをしよう!! 自転車でのツーリングでそれはかなり邪道であるが、根性を

出せる精神力がなかった。信号待ちの大型トラックの運転手に声をかける。

「あの〜 自転車で旅している者でして、西のほうへ向かいたいんですけどどこまで
 でもいいですから乗せてもらえないでしょうか・・・」

最初に話しかけたトラックの運転手さん、さすがにムゲに断るのもかわいそうだと思った

のか、丁重に断ってくれた。(笑)

最初に声をかけた人に断られたことがきっかけで眠っていた根性が復活。

「やっぱ自分の足で行かんと意味がないっ きばったろやないけ〜」



 福山駅の次の新幹線の駅に三原と言うのがある。(今は間に新尾道駅ができている)

三原駅に着いたのが夜9時くらいだったか、さすがに今日はもうここで泊まろうと思った。

瀬戸内海と言えば気候は温暖なところだが、3月だったので夜はまだまだ寒い。

地べたに寝るのはかなり危険だと言うことを以前の鳥取で経験済みなので、どこか

人目につかないところで寒さをしのげるところを探す。こういうことに関しては、今までの

経験でかなり目が肥えていて(笑)すぐに見つかった。駅前のデパート正面の階段を上がった

2階の正面玄関の前の靴の泥を取るマットの上。(笑)

ここなら他の人目にはあまりつかないし、マットの上と言うことで多少は寒さをしのぐ

ことができる。

早速寝袋を広げて中に入った。あっという間に夢の世界へ入っていった。

朝まで安泰と思われたこの場所、予想もしないことが起こった、夜中に誰か人が上がってきて

懐中電灯で照らされたのだ!!

普段そこら辺の人を見て怖いと思うことはない、だがしかし誰も来るはずがないと思って

いたところへ、しかも夜中に人間が現れると言うのはものすごい恐怖を感じる。

「君、なんでこんなところで寝てるんや?」

その人物の格好を見て、恐怖が一瞬で和らいだ。どうやらここのデパートの警備員らしい。

「いや、実は自転車で大阪から九州目指して走ってまして、いつも野宿しているんですが、
 ここなら雨風しのげるんでここで寝させてもらおうかと・・・」


その警備員は私の自転車を見て、私の言葉が嘘ではないと思ってくれたようで、

「明日は朝9時に開店するからそれまでにはそこをあけておいてくれればいいから」

とここで寝ることを快く承諾してくれた。

警備員さんのお墨付きや、これで安心して眠れる・・・



次は国道2号線後編です。お楽しみに。



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