2003/3/15 撤去工事


 日本では年々電力需要は増えていて、景気のいい頃は全国各地で大型送電線の新設

工事が行われていた。しかしこの長引く不況でかつては栄えていた工場でも閉鎖に

追い込まれるところも増えてきたよう。

工場でも特に電力をたくさん必要とするところは、電柱からではなくその工場のためだけの

送電線がある。今回のラインマンはその工場が閉鎖され、それに伴う送電線撤去のお話。



 今回の現場は富山県高岡市というところにある、結構町のなか。市場や住宅地、工場の

上を通っている送電線である。そういう住宅地の屋根の上を通っている送電線、いったい

どうやって撤去するのか?

写真や図ナシではわかりにくいかもしれないが、簡単に言うと電線をだんだん細いものに

抜き変えて最終的には細い荷造り用のヒモにして、あとはそのヒモを住宅地の屋根の

上を這わせて回収すると言う感じ。

最初から順を追って説明しよう。

今回の撤去区間は鉄塔9基分、まずその9基ある鉄塔のどちらか一方の端に電線を

巻き取ることができるエンジンのついたワインダーと呼ばれるものをセットする。

(エンジン場と言う)

同じく他方の端には巻き取られる電線の後ろに付けて、鉄塔9基分の長さをずーっと

出していくためのナイロン製のロープを巻いたリールをこれもワインダーにセットしておく。

(ドラム場と言う)

ここでドラム場のワインダーは巻き取りだけではなく、ブレーキをかける役目も果たす。

中間の各鉄塔ではすべて金車と呼ばれる直径20センチ〜60センチ(電線のサイズに

よって使い分ける)の滑車のようなものを鉄塔に取り付けてその上に電線を載せておく。

ここまで準備した状態を素通しと言う。

この素通しの状態でエンジン場で巻き取りながらドラム場で出して行くと最終的には

電線がすべてナイロン製のロープに入れ替わる。

次に各鉄塔でロープを切断、送電線には何本もの線があるが、一番上の線だけ残し他の

ロープはすべてその一番上の線に切断した端をぶら下げて隣の鉄塔で手で引っ張り

ながら回収。最後に一本だけ鉄塔から鉄塔へとロープが残っている状態になる。

このロープ、通常は直径12ミリのナイロン製ロープ。これをこのまま鉄塔からおろして回収

すると、住宅地の屋根瓦やアンテナに引っかかってしまう可能性もあるので、さらに

細いロープに抜き変える。

今回の現場では最終的に白い荷造りようのポリプロピレンロープ(P.Pロープ)に抜き変えて

そこまでして初めて鉄塔から地上へロープを下ろす。各鉄塔ごとの間がP.Pロープになると、

一方の鉄塔でそれを放し(ぶっ放し)、地上に(屋根の上などに)P.Pロープを這わせて

他端の鉄塔で回収すると。

こうしてすべての電線がなくなるわけです。

 うーん、やっぱり図ナシではちょっと難しいかなぁ・・・

ちなみに山の中では途中の課程を省いて早々にぶっ放し、そのまま木の間をズルズル

這わせて回収します。(笑)

おしまい。


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