28. あ と が き
Epilogue

オーストラリア一周を終えて

 今でもよく覚えている、シドニーを出発した初日のキャラバンパークで泊まった時のことを。

日本の21倍もの面積を持つ広大なオーストラリアをこんなオンボロバイクで本当に一周

することができるんだろうか、せめてエアーズロックまでは自力で走って行きたい・・・

とても不安な夜だった。

それが一日一日と経験を積むに連れて、また多くの同じような志を持った仲間達と出会うに

連れて不安がだんだんと安らぎ、それに代わって自信と言うものがだんだんとついていった。



 ケープヨークやナラボーなど、心身ともに疲れ果てるような自然との辛く苦しい闘いもあった。

キャンプ場で多くの仲間と一緒に、これぞ青春ともいえる楽しい時を過ごしたことも数知れず。

そして助けが無ければ今頃どうなっていただろう・・・と思う場面もあった。

一周を終えた時、そのどれもがいい思い出となって自分の心に深く刻まれた。



 ツーリング一周で覚えたこと、それは自然の驚異である。

広大な砂漠や平原にポツンと一人、また降り止まない雨など、自然の驚異をまざまざと

見せつけられた。それに比べて人間はなんてちっぽけなんだろう、何人束になってかかっても

大自然の驚異には逆らえないだろう。



 一周を終えてシドニーに戻ってきて数日後、学校で一緒だった友人に、帰還祝いに

一緒にレストランへ行こうと誘われて、その前に一張羅のジーンズがボロボロなので

新しいのを買おうと街でジーンズを買うのにもつきあってくれて。

新しいジーンズと新しいTシャツ、さっぱりした服装でステーキハウスに行った。

ステーキを食べながら、実は友人達には気づかれないように涙を流していたのだった。

その涙に友人が気がついた。 「どうしたROOKIE?」

「いや、 自分以外にもこんなにたくさんの人間がいる・・・なんかそれが嬉しくてなぁ、
 嬉しくてしょうがないや。」


自然の中にひとりぼっちという、今まで経験したことが無かった寂しさが続いたせいか。

友人が

「ROOKIEほどの男がそんなに言うくらいだから、よっぽどすごい経験をしてきたんやろうなぁ」

と心中を察してくれた。

道中の写真をいくつか見せていると気がついたことが一つ。

出発前と、一周後の自分の写真を見てみると明らかに顔が違う。

人間が一回り大きくなったような充実感があった。



そして、トラブル続きながらも最後までずっと一緒に頑張ってくれた TENERE。

タンクをさすりながら、「今までずっとありがとう ほんまによう頑張ってくれたなぁ」







ツーリング日記を書き終えて

 オーストラリアから帰国後も、

「せっかく貴重な体験をしてきてんから、記憶が残っているうちにしっかり記録を残しておかんと」

と言う思いはずっと持ち続けていた。

しかしそう思いながらも何もできないまま年月が過ぎていき、6年が経っていた。

AUSで知り合った友人の一人がAUSのことをテーマにしたHPを2年前に立ち上げたのをきっかけに

「よっしゃ 俺もやったろう」 と一念発起。

ホームページのホの字もわからない状態で、とりあえず本屋に行って「初めてのホームページ」

とか言う類の本を2冊購入。ホームページ作成ソフトも使い方がまったくわからなかったが、

画面上のありとあらゆるボタンを押してみてやってみて、ローラー作戦で少しずつ使い方を覚えていった。

そうして立ち上げた OUT BACK  ツーリング日記も予めできあがっているものを毎月アップして

いったのではなく、その時その時過去を思い出しながら、またどの辺で一つの章を区切ればいいか

考えながら月に一度のペースで更新が続く、偶然にもホームページを立ち上げてからちょうど

2年になるこの夏についに完結。インターネットは趣味の世界で時間ばかりが無駄に浪費されて

たいして実にもならないような感じもあるが、このツーリング日記は人に見てもらうことももちろんだが、

自分自身のためにも大いに意味があるものになった。

写真は何年経っても変わらず当時の記録を残してくれるが、自分の頭のほうはそうはいかない。

年を重ねるごとに記憶は薄れていくのである。そんな記憶がまだ残っているうちにツーリング日記と

いう記録を残すことができてよかった。

幸いにも写真が好きだった私は、かなり大変なところにもカメラを持ち歩いていて、たくさんの

写真を撮ってきた。普段ではなかなか見ることができない光景を多くの人に見てもらえれば、

これまた嬉しい。

見てくれた人の感想文を読んだ時のうれしさ、この点がツーリング日記を

書き続ける原動力となったことは間違いない。



 この週末(2002年7月20日〜21日)、我が家には友達が遊びに来てくれた。

オーストラリアをツーリング中に知り合った仲間達である。

バイクでOUTBACK を疾走していた頃から9年の月日が経つが、すばらしい経験を共に得て、

時間を共有していたもの同士のつながりは深い。

20代の若僧だったライダー諸氏も、今ではみんな30過ぎて、結婚もしてそれぞれの人生を

歩んでいるが、一生の宝物になるAUSでの時間を、長短の差はあれども共に過ごした

若者達はいくつになってもみんながそろう時の楽しさは当時のままかもしれない。



 ツーリング日記、写真のサイズを軽くしたり、枚数を減らしたりしてアップしていたとは言え、

全部見るのにはかなりの時間がかかったことだと思う。

いつも日記を読んでくれて、今もなお応援してくれるゲストのみなさまに感謝の気持ちを込めて。

ありがとう。


                                  2002年 7月 24日  ROOKIE


ツーリング写真館もどうぞご覧ください


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