逃  走 2000/10/3up

 旅の思い出第一回は、僕が鮮明に記憶していることでもっとも古い、

昔のエピソードを書いてみます。

 僕の実家は大阪の下町、家のすぐ横を電車が走っていたせいか、

物心ついたころには自然と電車が好きになっていた。

あれは2歳の時、おむつが取れたばっかりで、でもオモラシも

したりしていた頃だから3歳になるちょっと前か。

駅前にあるスーパーへ買い物に行くのに、母親に手を引かれて一緒に歩いていた。

スーパーに着いて、母親が目を話した一瞬のスキをついて僕は駅の方へ逃走、

大衆が渦巻く大都会の一角、母親がほんのちょっと目を離したスキに

僕はその雑踏の中へ消えていった。

電車が目の前を走っている、ただ単にそれに乗りたかっただけのこと。

第1関門の改札口をあっさり通りぬけた僕は、最初に来た電車に飛び乗った。

生まれて初めてひとりで乗る電車、 (あたりまえだが) うれしくて母親のことなど

すっかり忘れている。最初に着いた駅、目の前の扉が開いたのでそのまま降りる。

そこは乗り換えの出来る大きな駅で、偶然にも同じホームの目の前にもまた電車が

停まっていた。 次から次へと現れる電車、遊園地で乗り放題になって遊んでいる気分。

だがしかし、乗り換え駅で目の前に停まっていた電車は特急だったのだ。

京都行きの特急、僕が乗った駅を出ると通過する駅連続20、いきなり京都市内

までノンストップだった。30分近くひとりで車内を走り回っている僕、

乗客が不審に思ったのだろう。ここからは想像でのことだが

乗客 : 「あの子さっきからずっと走り回っているけど、親はどこにいるのかしら? 
       もうずいぶん時間も経つのに・・・。車掌さん、あの子迷子じゃないかしら??」


車掌 : 「どなたかこの子の保護者の方いらっしゃいますか??」

車掌さんが一生懸命僕の親を探してくれたようだが、みつからずそこであっさり御用。

ここからまた自分の記憶に戻って、

僕が乗ってから最初に着いた駅は京都市内の四条大宮。 車掌さんから連絡がいっていたらしく

駅員さんに連れられていった。その特急に乗っていたということは少なくとも大阪市内から

やってきたということ、しばらくして警察のおじさん達が来て、そのまま警察署へ連れていかれた。

警察署のおじちゃん達はとってもやさしく、ラムネ菓子を買ってくれてご機嫌な僕。

今頃母親が真っ青な顔をしてあわてふためいていることなど、知るよしもない。

まだおむつがとれたばっかりの僕はやはりそこでオモラシをしてしまった。

警察のおじちゃん達も大変やったやろうなぁ、やさしいおじちゃん達は新しいパンツを

買ってきてくれて僕にはかせてくれた。われながらよく覚えているものだ。

そうこうしているうちに、おばあちゃんが向かえに来てくれた。何事もなかったように

駆けよっていって 「あっ おばあちゃん!! (^O^)/」 



 ちょっと目を離したスキに息子がいなくなり、およそ1時間後にいきなり40q近く離れた京都に

いるなんて連絡を受けたらそりゃぁ 親はびっくりするわな。

 うちのボンが今ちょうどその頃の僕とおなじくらいの年か。 

おまえは父を越えるんだぞ!! と言っても聞いているのかどうか・・・  

ROOKIEの放浪癖は筋金入りです・・・(笑)

                       終わり


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